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少女の内なる願いが災厄を引き起こす・・・北欧のサイキック・ホラー『テルマ』を観てきました!



こんにちは。アキュバルです。

ひっさびさの映画トークです。以前知り合いに『チョイスがマイナーすぎる』というお叱り(激励)の言葉をいただいて、そうか、じゃあ『アベンジャーズ』みたいなエンタメ作品で書いてみようかなと思っていたのですが、やっぱり「この作品の良さは俺だけが知っている」みたいなマイナー感がないとダメみたいです・・・。

というわけで今回は、北欧ノルウェーを舞台にした美しきサイキック・ホラー『テルマ』を鑑賞してきました!


本作監督ヨアキム・トリアー氏。デンマーク、コペンハーゲン生まれ

本作に興味を持ったのは、なんといっても監督が映画界の「鬼才」として知られるラース・フォン・トリアーの甥、ヨアキム・トリアーさんだということ。

ラース・フォン・トリアー監督の作品では『アンチクライスト』『ダンサー・イン・ザ・ダーク』『メランコリア』などを観たことがありますが、時に過激なのだけど、恐ろしいほどの静謐さを感じさせる映像美が深く印象に残っています。

予告編で暗示されるテーマや映像も素晴らしく、「鬼才」の血を受け継ぐヨアキムは一体どんな映画を撮るのだろう?と俄然興味が湧いてきました。

|「テルマ」は一体どんな話?


主人公は、親元を離れてノルウェーのオスロ大学に通う女子大生テルマ。テルマは敬虔なキリスト教徒ですが、学校の誰とも打ち解けず、毎日のように電話をかけてくる父親にだけ本心を打ち明けています。

ある日、図書館で原因不明の発作を起こしたことがきっかけで、テルマは隣に座っていた女子大生アンニャに声をかけられます。次第に親しくなり、酒やタバコを覚え、自分を解放していくテルマ・・・しかし、アンニャと知り合った頃から奇怪な現象がたびたび起きるようになり、テルマはアンニャへの恋心とともに、自分の中に眠る恐ろしい力に気づき始めます。

|「恐怖」の向こう側に見えるもの


『テルマ』は一応、サイキック・ホラーという触れ込みです。確かにそこにはブライアン・デ・パルマの『キャリー』のような、少女の中に秘められた恐ろしい超能力が描かれているし、自然発火や突然死、激しくストロボが明滅する検査のシーンなど、意図的に観客を刺激する演出が盛り込まれています。

しかし、『テルマ』はやはり一人の少女が過干渉の両親や古い因習から解き離れて「大人の女性」への階段を登る物語であり、そういった意味ではホラー映画でありながら、純然たる青春映画という見方もできるでしょう。


優しい口調で、しかし執拗に娘の近況を聞き出す父親の姿はやはり不気味であり、実はその態度がテルマの封印された過去に関係しているということが、物語が進むにつれ明らかになってきます。

しかし、やはりそこで描かれているのは普遍的な「家族」の姿。娘に愛情を抱き、保護したいと思うからこそ、過度に干渉してしまう。古くから受け継がれてきた伝統や宗教でさえ、時には羽ばたこうとする少女を抑えつけてしまうのです。

本作で描かれているのは、一見モンスター的な相貌を見せてはいても、やはり私たちにも共通する家族の悩み、青春の感情なのではないでしょうか。

|物語に寄り添う北欧の風景


そして何より目を見張るのがロケーションの素晴らしさと映像の美しさ。寒々とした、透明感のあるノルウェーの景観が、作品全体に心地よい緊張感と静謐さをもたらしています。森林やオペラハウスなど、ノルウェーを象徴する景観が多数登場するのも魅力ですが、個人的なお気に入りは冒頭の氷河のシーン。

猟銃を持って歩く父親と幼いテルマ。足元には二人の関係性をそのまま示すような、今にも割れそうな薄い氷が広がっている。氷の下にちらりと見える二匹の小魚。森に入り、鹿に向かって猟銃を構えた父親は、なぜかゆっくりとテルマに銃口を向ける・・・。

冒頭のシークエンスとしては、近年稀に見る美しいイメージだと思いました。父親に対する「なぜ?」という気持ちが、そのままこれから展開される物語への期待感につながる、秀逸な導入部ですね。こうした映像センスには、まさに叔父ラース・フォン・トリアーの「遺伝子」を感じずにはいられません。

|解き放たれたのは天使?悪魔?


テルマが森林で生命の息吹を感じる場面。どこか、ケルト的な土着の信仰や神々の存在を感じせさせる

本作のラストに関して、少女が解放されたというハッピーエンドなのか、それとも世に恐ろしい力が解き放たれてしまったというバッドエンドなのか、という議論がありますが、僕の解釈では圧倒的に前者なのではないかと思っています。

物語の冒頭では生硬な表情で固まっているテルマがアンニャと過ごすうちに徐々に変化し、年相応の微笑みを獲得していく過程はとても魅力的。とくにアンニャと二人でキリストの悪口(悪魔とかクソとか)をキャッキャッと言い合うあたりは、最高にキュート!

ちなみに、友人のアンニャ役の女優さんは「オケイ・カヤ」の名で活躍するミュージシャンで、演技は未経験とのこと。テルマ役のエイリも新人女優で、こうした経験の浅い女優さんたちの放つ純粋さ、瑞々しさが画面に充満していることも大きなポイントですね。

「鬼才」の血を受け継ぐ者が創り上げた、世にも美しい「願い(タブー)」の物語。ホラー映画が苦手な人にもオススメの作品です。まだしばらく公開しているようなので、興味のある方はぜひ!


テルマ

監督 ヨアキム・トリアー

原題 Thelma

製作年 2017年

製作国 ノルウェー・フランス・デンマーク・スウェーデン合作

上映時間 116分

映倫区分 PG12

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