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天球に存在しない、幻影の星。ラーフ・ケートゥは他の惑星とどう違う?



今回は、インド占星術の9つの惑星(ナヴァ・グラハ)の中でも特異な存在、ラーフケートゥの謎にせまってみたいと思います。


ラーフ・ケートゥとは、実際の天球には存在しない影の惑星(チャヤ・グラハ)。

月と太陽の軌道の交点であり、計算によって導き出されるSensitive Point(感受点)のことです。その名称はインドの神話を起源としており(「太陽を喰らう竜、月を呑む悪魔」参照)、西洋占星術においてもドラゴンヘッド、ドラゴンテイルというかたちで解釈に取り入れられています。


一応、「惑星」のひとつである以上、基本的に他の水星、土星などと扱いは変わりません。ホロスコープにおいて在住したハウスに影響を及ぼしますし、つくづく不思議だなーと思うのですが、ダシャーにおいても一定の期間を担当し、しっかり機能します。


しかしこのラーフとケートゥ、特に初心者には取り扱い注意の惑星でもあります。

なぜか。

それは、実在しない幻の惑星だけあり、他の惑星に適用できるルールがラーフ・ケートゥに関しては通用しなかったりするからです。

いわば惑星界の「はぐれ者」ってわけですね。


では、ラーフ・ケートゥは他の惑星と何が違うのか?

ひとつひとつ見ていきましょう。


 

その① 星座を支配しない


星座と支配星

12星座にはそれぞれ、支配する惑星が割り当てられています。

しかし、上の図を見ればわかるように、ラーフ・ケートゥが支配する星座はありません。


つまり解釈の際、在住だけで支配は見ないということになりますが、ラーフとケートゥの場合はアスペクトされる惑星やコンジャクトする惑星の影響を強く受けることになります

この点は非常に重要なので覚えておきましょう。

また、もし影響を受ける惑星が何もない場合、ディスポジターの状態が重要になります。


ちなみに、例外としてジェイミニ占星術においてラーフは水瓶座、ケートゥは蠍座の支配星として扱う時がありますが、このことに関してはおいおい説明します。



その② 惑星の品位(高揚・減衰等)が存在しない


惑星には品位、すなわちどの星座に在住するかによって強さが変化します(「【永久保存版】惑星の品位一覧」参照)。

しかし、ラーフには支配星座がないため、惑星の品位が存在しません。


ただし、これには諸説あり、牡牛座がラーフの高揚点、蠍座がケートゥの高揚点、水瓶座がラーフにとっての定座など、古来よりさまざまな解釈がなされてきました。

しかし、少なくともK.N.ラオ師はラーフ・ケートゥの品位は採用しないという立場を貫いているようです。



その③ 他の星座にアスペクトしない(パラシャラ)


このことは、以前の記事「インド占星術のアスペクト・ルール」で解説しました。

ラーフ・ケートゥのアスペクトに関しては諸説ありますが、今のところ自分は「アスペクトしない」立場を取っています。


ただし、これはパラシャラ方式においてであり、ジェイミニ方式においてはラーフ・ケートゥもしっかりジェイミニ・アスペクトします。



その④ チャラ・カーラカに含まれない


チャラ・カーラカに関しては「【ジェイミニ占星術】とっても重要なチャラ・カーラカ」をご参照ください。度数の高い惑星から順にカーラカ(表示体)を割り振っていくわけですが、例えばラーフとケートゥの度数が一番高くてもアートマ・カーラカにはなれません。


これも諸説あったようですが、K.N.ラオ師がラーフ・ケートゥを含まない7カーラカ制を提唱し、現在は広く受け入れられています。

そのほうが明らかにチャラ・ダシャーが機能するからなのですが、その根底には「ラーフは阿修羅の惑星なので、魂の表示体であるアートマ・カーラカにはなれない」といった理由があるようです。



その⑤ 独自のラージャ・ヨーガが存在する


ケンドラハウスの支配星とトリコーナハウスの支配星による「出世」のコンビネーション、「ラージャ・ヨーガ」については先日解説しました(「ホロスコープに刻まれた「成功の証」【ラージャ・ヨーガ】)。


ラーフは支配星になれない以上、この方法でラージャ・ヨーガを形成することはできませんが、実はある条件を満たした時にラージャヨーガ・カーラカとなり、成功をもたらすことができるのです。その条件とは以下の通り。


Ⅰ. ケンドラハウスに在住し、トリコーナハウスの支配星と絡む。

Ⅱ. トリコーナハウスに在住し、ケンドラハウスの支配星と絡む。



こちらはアドルフ・ヒトラーのホロスコープ。

ラーフがトリコーナハウスの9室に在住し、ケンドラハウスの10室を支配する月にアスペクトされていますね。上の「Ⅱ」のケースに該当するため、ヒトラーのラーフはラージャヨーガ・カーラカとなり、出世・昇進の表示体となります。


ちなみにヒトラーのラーフ期は1934年8月から。1934年8月は、ドイツのヒンデンブルク大統領が死去し、ヒトラーが元首と首相の権能を統合した「Führer(指導者)」の地位に就いたまさにその月。ラージャヨーガ・カーラカと化したラーフがヒトラーに絶大な地位を与えたことがよく出ています。


 

今回紹介した例外則はまだほんの一部(たぶん)。

ラーフとケートゥについて他に言えることがあるとすれば、特にラーフはその人が人生において「ハマっている」テーマをあらわしているということ。それは確かです。


時に目が眩むような栄光をもたらすこともあるラーフ。

しかし、それは阿修羅がもたらした束の間の幻影かもしれません。

くれぐれもご注意を・・・。



その惑星の在住星座の支配星のこと。(例)太陽が蟹座に在住→月が太陽のディスポジターとなる


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