運命はつらい。でも人生は美しい。映画『女と男の観覧車』を観てきました!


こんちは。アキュバルです。

このブログではたびたび映画レビューを載せているのですが、先日鑑定に来てくれた方は、この映画レビューを読んで興味を持っていただけたということ。

「ちまちま書いてきた甲斐があったなぁ」とちょっとしみじみしました。ということで、張り切って今回も映画評を書いてみます(^^;;

今回鑑賞してきたのはウディ・アレン監督の新作『女と男の観覧車』。『ミッドナイト・イン・パリ』『ブルー・ジャスミン』のオスカー受賞が比較的記憶に新しいウディ・アレン監督ですが、それ以降も精力的に活動し、約1年に1本というハイペースで新たな作品を生み出し続けています。

ウディ・アレン監督。写真は『マジック・イン・ムーンライト』撮影時のもの

御年82歳。もう「後期高齢者」といっても差し支えありません。しかし、いまだに全世界がウディ・アレン監督の一挙一投足に注目しているし、名だたる名優・女優たちの熱烈なアプローチを受けていますよね。僕自身も、ウディ・アレン監督の作品が公開されれば必ず観にいくようにしています。

一体彼の作品のどこが魅力的なのか、と問われるとちょっと考えてしまいますが、ひとつにはシェイクスピア作品を彷彿とさせる詩情の豊かさ、機知の鋭さ、ユーモアの巧みさ。そして何と言っても重厚な「悲劇性」です。

何しろ多作な監督なので、大作から小粒の作品、悲劇寄りの作品、喜劇寄りの作品などさまざまですが、作品に通底するどこかペシミスティック(厭世的)な世界観、そして登場人物たちの悲しみをどこかそっと優しく包み込むような愛情あふれる眼差しは、昔から変わっていないのではないかと思います。

『女と男の観覧車』はどんな話?

『女と男の観覧車』の舞台は、1950年代のコニー・アイランド。いわゆるリゾート地であり、遊園地ですね。かつての隆盛ぶりには陰りが見えているけれど、今だにリゾート客で園内は賑わいを見せています。

ヒロインは園内のレストランで働くバツイチのウェイトレス、ジニー(ケイト・ウィンスレット)。ジニーはかつて女優を志していましたが、回転木馬の操縦を生業にするハンプティと再婚し、窓の外に観覧車が見える園内の部屋を借りて暮らしています。

ジニーは夏の間、ビーチの監視員のバイトをしている演劇作家志望の学生ミッキーと恋仲になり、退屈な日常から連れ出してくれることを夢見ています。しかし、ジニーの連れ子であるリッチーは放火癖や窃盗癖があるため、いつも息子のことでトラブル続き。ジニーはつねに偏頭痛を抱えています。さらにハンプティの前妻との子であるキャロラインがギャングに追われ、家に転がり込んできたことがきっかけで、家庭は次第に悲劇的な結末へと導かれていく・・・。

ケイト・ウィンスレットから目が離せない!

本作は、ウディ・アレンの作品の中ではどちらかといえば小粒な作品に当たるでしょう。『ミッドナイト・イン・パリ』『ローマでアモーレ』など、世界各地の観光名所を舞台にした作品群に比べると、本作はシチュエーションがコニー・アイランドの園内に固定されており、室内シーンが多いのが特徴です。

しかし、むしろ固定シチュエーションを活かした長回しの場面など、非常に演劇的な手法が多くとられており、ラストシーンでは本当にシェイクスピアの悲劇を観劇しているような気持ちになりました。これは本当に俳優陣の演技力の賜物でしょうね。

ケイト・ウィンスレットが『タイタニック』のヒロインを演じたのはもう20年以上も前になりますが、役どころにおいては、『ブルー・ジャスミン』のヒロインに近いのかなと思いました。『ブルー・ジャスミン』では転落したセレブの生活が描かれていあましたが、本作で描かれているのも過去の栄光にとらわれた女性の妄執と狂気。ケイト・ウィンスレットは生活に疲れた中年女性と、夢見て輝いている「女優」の顔を見事に演じ分け、その肌の下にひそむ「熱情」と「狂気」を私たちに突きつけます。

例えば、ジニーがミッキーに会う前に、鏡の前で演劇の練習みたいに会話のシミュレーションをする場面があるのですが、はっきり言ってかなりこわかったです。でもこれ、僕もやったことあります(笑)。だから、他人事じゃないんですよ。こういう場面って、自分のおぞましい部分を見せつけられているようで、ぞっとするんですよね。

随所に光る、ウディ・アレン「らしさ」

本作は、まぎれもない悲劇だと思います。それは、ミッキーとジニーの会話の中に『ハムレット』やチェーホフの戯曲など、数々の悲劇の名作のタイトルが出てくることからも察せられます。つまり監督は観客に、「これは悲劇の映画なんだよ。だから最後にどうなるか、わかってるよね」と観客に伝えようとしているのです。まったく、どこまで性格が悪いのか(笑)

でも、その怒涛の哀しみの中ではっと胸をつくのが映像の美しさ。上の画像はハンプティの娘、キャロラインが雨の中、ミッキーの車に拾われるシーンです。『ミッドナイト・イン・パリ』でも雨に煙るパリの美しさが描かれていましたが、その感性は本作にも受け継がれています。こういう場面を見ると、ウディ・アレン監督って本当にモテるんだろうなぁと思う。だって、女性の狂気も哀しみも、その美しさもとことん知り尽くしているのだから。

登場人物たちを見守る「運命の車輪(Wheel of Fortune)」

「この世には運命というものがある。そう思わないかい?」

「そうね。でも私の悲劇は自己責任なのよ」

そんな何気ない会話から始まったジニーの恋。その結末はぜひ、劇場でその目で見て確かめてみて欲しいと思います。

「ここではない、どこか」を求めてあがきながら、どこにも行けないジニー。そんな彼女の状況を、部屋の窓から見える観覧車が象徴しているかのように思えました。めぐりめぐる罪と罰はまさに因果の車輪(Wheel of Fortune)のようですね。

そういえば、占星術師として気になった点をひとつ。ジニーは神秘的なものにも傾倒しているようで、ミッキーに「私たちはお互い獅子座よね。獅子座は、寛大で美しいのよ」なんてことを言ったりしています。たぶん、雑誌の星占いだと思いますが。

果たしてジニーが「寛大」かどうかはともかく、確かにジニーは獅子座の持つ気高さや雄々しさ、そして「火」の性質を持っている女性だと思いますね。「さそり座の女」ならぬ、まさに「しし座の女」です。

息子に放火の癖があるのは、母親の持つ熱情の「炎」を、彼なりに受け継いでいたということなのでしょうか・・・。

なんだか話がとりとめなくなってきたので、今日はこのへんで!

『女と男の観覧車』

公開:2018年6月23日(土) 監督:ウディ・アレン 出演:ケイト・ウィンスレット、ジャスティン・ティンバーレイク、ジム・ベルーシ、ジュノー・テンプル、ジャック・ゴア、デヴィッド・クラムホルツ、マックス・カセラ他 上映時間:1時間41分 制作年・国:2017年 アメリカ

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