心理学者ユングと富の【ヴァスマティ・ヨーガ】

今回はヨーガ(惑星の特殊なコンビネーション)の紹介の第2弾です。
仕事、恋愛、健康・・・鑑定の場ではみなさんから色々な質問が出ますが、口に出す出さないに関わらず、例外なく気になっていることといえば「お金」でしょうね。
でも、意外と質問されることって少ないんですよね。
ダイレクトに「お金」について聞くのはちょっと恥ずかしいという気持ちもあるのかもしれないし、悪いことを言われたら不安だという心理もあるのかもしれない。
まあそれはともかく、インド占星術で経済状態を見る時は、2室と11室。あとは嗜好品や富をあらわす金星や木星の状態も重要です。
特殊な計算で「お金」をあらわす感受点を導き出したり、さまざまなテクニックを使いますが、ひとまずこれが原則ですね。
しかし他にも、それ自体で「富」「裕福な生活」を意味する特殊なヨーガが存在します。
それが今回ご紹介するヴァスマティ・ヨーガです。
Vasumati Yoga
【定義】
すべての吉星(水星・金星・木星)がラグナ、あるいは月からウパチャヤ・ハウス(3,6.10,11)に在住する。
【意味】
ダーナ・ヨーガ※のひとつ。富。裕福な生活。

「ヴァスマティ」とはお米のことですね。インドやパキスタンで何百年にもわたって栽培されてきた品種で、「香りの女王」というヒンドゥー語がその由来だとか。
つまり、このヨーガを持つ者は食いっぱぐれないということでしょうか。
以前の記事(「【アディ・ヨーガ】月の光が満ちる時・・・」)ではアディ・ヨーガを持つ大富豪のビル・ゲイツについて紹介しましたが、アディ・ヨーガは富のヨーガというわけではありません。しかしこのヴァスマティ・ヨーガは正真正銘の「富豪」のヨーガなのです。

実はこのヴァスマティ・ヨーガ、対面鑑定では一度もお目にかかったことがありません。
というわけで、身近で唯一の実例である自分のチャートで説明します。
・木星が10室に在住。
・水星、金星(と月)が11室に在住。
10室も11室もウパチャヤ・ハウスなので成立条件を満たしていることがわかります。
では、占星術師アキュバルは裕福な生活を送っているのか?
残念ながらNoです。
果たして、このヴァスマティ・ヨーガには本当に効力があるのか?
ということで、色々な有名人のホロスコープを漁ってみましたので、ひとつ実例を紹介します。

カール・グスタフ・ユング氏。 分析倫理学(ユング心理学)を創始したスイスの精神科医・心理学者です。「集合的無意識」で有名ですね。
6室に水星と金星、10室に木星。ひとまずヴァスマティ・ヨーガの成立条件を満たしています。
経済面に焦点を当ててユングの生涯を見てみると、牧師の家に生まれながらも医師を志して進学したユングは、父親の死で経済的困窮に立たされることになります。
生まれ育った家庭状況をあらわすのは2室。2室には土星が在住し、さらに火星のアスペクトを受けて傷ついていますね。
しかし、工場主の娘で裕福なエンマと27歳の時に結婚。以降ユングは、フロイトが嫉妬するほど経済的には恵まれた生活を送るようになります。
さらに、ユングの著作が欧州からアメリカへと広がったのは、石油王・ロックフェラーの4女、イーデス・ロックフェラー(1872~1932年)の資金援助によって「心理学クラブ」を設立したことがきっかけでした。
つまり、ユングは幸運にも人生の要所要所でお金持ちのパートナーの援助を受けることができ、それが成功の契機のひとつとなっていることがわかります。
まあ、まだそれほど多くのホロスコープを見たわけではありませんが、ヴァスマティヨーガの持ち主は作家、スポーツ選手、経営者と幅広く存在します。しかし感触としては、以前の記事(「ホロスコープをふと美しいと思うとき」)で紹介したマリカ・ヨーガのように、育ちの良さや生家の裕福さをあわらすというわけではなさそうです。
あくまで自助努力やパートナーなど、後天的な要素によって「食い扶持」をつかむ、それがこのヨーガの性質なのかもしれませんね。
※「富」を暗示する惑星のコンビネーション。通常、1室、2室、5室、9室、11室の支配星同士のコンビネーションを指す。